愛媛県???

今治市宮窪町の奥にそびえる『村上水軍博物館』
その前に立つ、ショートカットが目印の女子大生。
名前はウシオ。
松山市の某大学に通う、今治市出身の元気で明るい女の子である。
休日を利用し、念願の村上水軍博物館を訪れたのであった。

 
	うしお
 
わ?!この人が村上武吉さん…。海賊王と呼ばれた男かあ。威厳あるなぁ~
 
 

村上武吉の銅像や、館内の資料や歴史にいちいち感動しながら見て回るウシオ。
子供の頃から、海と海賊に心惹かれるものがあり、今日はいつも以上にテンションが上がっている。

博物館二階の景色から見える小さな島・能島を見て不思議と懐かしい気持ちが湧いてくる。
あれが能島。海賊達が拠点にしていた島…。小さいけれど、強い力を感じる島だわ…

博物館二階、奥の間にある資料コーナーの、武吉が着ていたと言われる、赤い羽織の前に立つと、懐かしい気持ちが更に強くなり、胸が高鳴りはじめる。
 
	うしお
 
なんか…すごいドキドキする!!この羽織…私…初めて見るのに、ずっと私が着てた物みたいに感じる…!
 
 
ガラス越しに触れようとした瞬間、眩しい光に包まれた。
な、何!?
 
我の生まれ代わりの者よ。いつか、ここに来る日を待ちわびていたぞ
渋い声と共に現れたのは、大きな髭を蓄えた、赤い羽織りを着た精悍な武将。
それはまさに、往年の村上武吉であった。
 
	うしお
 
あなたは…!海賊王!?私があなたの生まれ代わり!?ウソッ!って足が無いーー!!
 
 
うっすら透けていて、足も無い。武吉の亡霊である。
いかにも。現代のこの世をお前の中からずっと見ていた。この羽織の力でやっと出てくる事が出来たわい。
 
 
	たけよし
 
 
 
	うしお
 
信じられないけど…。本当にいる…。私があなたの生まれ代わりなんて…
 
 
 
	たけよし
 
 
 
	うしお
 
 
我々が、人々を厳しい海から守り、陸から陸へ渡していったように、おぬしが水先案内人になれば良いのだ。現代の、愛媛の水先案内人にな。
 
 
	たけよし
 
 
そう。
ウシオは、田舎から人が離れて行く現状を嘆いており、自分の生まれ育った今治市、そして愛媛県の良い所をもっと沢山の人に知ってもらって楽しんでもらいたいのに!!と常々考えていたのだ。
 
	うしお
 
水先案内人なんて…。私はあなたみたいに、力も人脈も無いし…
 
 
バカもん!その気があれば、誰でも海賊になれるわい!
 
 
	たけよし
 
 
 
	うしお
 
 
ワシらの時代に無くて、今は当たり前にある物。インターネットじゃ。ネットを使えば簡単に全国、果ては世界の人々に愛媛県を紹介する事が出来るじゃないか
 
 
	たけよし
 
 
 
	うしお
 
え…!ネットとか…ご存知なんですか…?
(その姿でネットとか言われると…ちょっと…)
 
 
言ったであろう。おぬしの中からずっと見ていた、と。現代の世は、何とも楽しそうな世界であるな。見ているだけでワクワクしたぞい!
 
 
	たけよし
 
 
 
	うしお
 
インターネットかぁ…。考えた事無かったけど、それなら私にも出来るかも。
 
 
ウシオよ。おぬしは、かつて、瀬戸内海を制したワシの生まれ代わり。どんな屈強な海も渡っていけるはずじゃ。
 
 
	たけよし
 
 
武吉の言葉に、やる気が湧いてくるウシオ。
 
	うしお
 
私も、渡りたい!そして、沢山の人に渡って欲しい!この海を…!
 
 
それなら仲間が必要じゃな。仲間がいてこその海賊じゃ。わしも手伝ってやるぞ
 
 
	たけよし
 
 
 
	うしお
 
 
 
	たけよし
 
 
そう言うと、武吉は白く光り、ウシオのスマホのストラップ人形の中に吸い込まれていった。
 
	うしお
 
 
 
	たけよし
 
 
さっきまで、ウシオの好きなキャラの人形だったストラップが、少々いかつくなり、デフォルメされた武吉のストラップ人形になってしまった。特徴の大きな髭は更に目立ち、赤い羽織りを着用している。
 
	うしお
 
 
ワシはこの土地の、この海の海賊王と呼ばれた男ぞ。出来ぬ事はない。ふはっはっはっ!!
 
 
	たけよし
 
 
 
	うしお
 
喋り方は変わらず厳ついままだが、喋るタケヨシ人形は、どう見ても可愛い。
 
 
 
	たけよし
 
 
 
	うしお
 
 
タケヨシ人形の手を取り、はしゃぐウシオ。
 
	たけよし
 
 
 
	ジャック
 
すごいっ!そのお人形、喋った!?まるで、海賊王・ミスタータケヨシだ!
 
 
男の子の声が聞こえ、振り返ると…
外国の、まるでカリブの海賊が被るような帽子をかぶった、金髪碧眼の男の子がいた。
 
	たけよし
 
 
 
	ジャック
 
 
目を輝かせている男の子。
 
	うしお
 
えーと…。この人形の中身はタケヨシさんだけど、幽霊で…何て説明したらいいのかしら
 
 
童よ、いかにもワシは海賊王、村上タケヨシじゃ。今はこんなナリをしておるがな。このウシオの手伝いをするために、今しがたこの世に蘇ったのじゃ。
 
 
	たけよし
 
 
 
	ジャック
 
日本のカイゾク!カッコイイ!!ブラボー!!ボクの名前はジャック。
カイゾクになりたいんだ。強くてかっこいいでしょ。僕のパパもお船の仕事をしているんだよ。
 
 
 
	ジャック
 
それで今治に来たんだ。ここは日本一の造船の街だって、パパが言ってた。
今日は、パパとママが海賊好きなボクのために連れて来てくれたんだ。
二人は今、下のフロアでDVDを観ているけどね
 
 
興奮気味で一気に話す男の子にタジタジになりながらも微笑むウシオ。
 
	うしお
 
そっか、ジャック君。その帽子、良く似合ってるよ。日本語も上手だね。
 
 
ありがと!ママが日本人だからね。日本語も完璧だよ。それで、ミスタータケヨシは、お姉ちゃんの何を手伝うの?
 
 
	ジャック
 
 
 
	うしお
 
私の名前はウシオ。この愛媛のいい所や楽しい所を紹介していきたいなって思っているんだ。
 
 
ボクも、愛媛の事を知りたい!昨日、今治に着いたばかりだからね。知りたい事がいっぱいだよ
 
 
	ジャック
 
 
ジャックよ、海賊に憧れておるようじゃな。おぬしも、ワシらの仲間になって、ウシオを手伝うか?村上海賊の事も、愛媛の事も知る事ができるぞ。
 
 
	たけよし
 
 
やったぁ!ボクも仲間になる!ウシオちゃん、ボクにもお手伝いさせて!
 
 
	ジャック
 
 
 
	うしお
 
すごい!もう仲間ができた♪ジャック君、よろしくね!
 
 
ボクの事はジャックでいいよ。あっ、パパとママが呼んでるから行かなきゃ。また今度ね!ミスタータケヨシ、ウシオお姉ちゃん、よろしくね!
 
 
	ジャック
 
 
両親と一緒に博物館を後にするジャックの後ろ姿を見送る2人。
 
	うしお
 
さあて、可愛い仲間も増えた事だし、私達は帰って早速作戦会議よ!
 
 
 
	たけよし
 
 
自宅のPCの前で作業をしているウシオ。
 
	うしお
 
サイトのいい名前が浮かばないよ?。海賊のかわらばん、じゃ何だか古くさいし、愛媛の事情、じゃ何だかワケありみたいだし…
 
 
ウシオよ…。おぬしのセンスにワシは少々不安を覚えるぞ。
 
 
	たけよし
 
 
 
	たけよし
 
 
モンモンと悩むウシオを見ていて、何かを閃くタケヨシ。
ふむ…。海賊つうしん。というのはどうじゃ?ネットのサイトっぽさ、村上海賊の雰囲気にウシオの女子の雰囲気も感じられるじゃろう
 
 
	たけよし
 
 
 
	うしお
 
 
そんな2人を窓の外から覗く人影がある…。
ワシとおぬしとジャック…。海賊と謳うならもう少し仲間が欲しいところじゃがなあ…
 
 
	たけよし
 
 
 
	越智さん
 
話は聞かせてもらったわよ。ものすごい霊気を感じるからちょっと寄ってみたら、あらビックリ。伝説の海賊王・村上武吉の幽霊がいるとはね!こんなに可愛らしいカッコになってるけど、さすがね?。霊気が普通の人の10倍はあるわ。
 
 
そう言いながら、窓を開けて入ってきたのは、人では無く、何とも可愛らしい三毛猫であった。直立二足歩行をし、エプロンを着け、買い物カゴを持っている。
 
	越智さん
 
 
 
	越智さん
 
ワタシは越智いうモンだけど、愛媛のおばちゃんが好きな情報だったらまかせて。こう見えても主婦歴は長いからね。ほほほ。
 
 
可愛らしい猫が喋っている光景はちょっと不思議だが、人形に幽霊が憑依し、喋るのを目の当たりにした今となっては、何でも無い事のようにウシオは感じ、何も突っ込まなかった。というより、越智さんの勢いに突っ込めなかった。
 
	越智さん
 
 
 
	うしお
 
 
 
	たけよし
 
 
 
	越智さん
 
じゃあ、なんかあったら寄らせてもらうわね。“海賊つうしん”ものすごくええと思うよ!
 
 
そう言うと、軽やかに越智さんは去っていった。
 
	たけよし
 
 
 
	うしお
 
 
 
	たけよし
 
 
こうして---
愛媛の地域密着型情報発信サイト「海賊つうしん。」は立ちあがったのであった。